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【医療統計版】特定時点の生存率:3年生存率をどう読むか

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生存曲線を示した研究では、「3年生存率80.9%」のように特定時点の値が主要な結果として報告されることがあります。この数値を曲線の高さとして読むだけなら簡単ですが、その時点までに死亡した人数の割合とは一致しません。打ち切りをどう扱った推定値なのか、3年時点に何人が観察下にいたのか、信頼区間がどこまで広がっているのかまで見ないと、数値の確かさを取り違えます。

この記事で扱うのは、Kaplan–Meier曲線から特定時点の生存確率を読み、研究結果として解釈する範囲です。3年という一点の推定値、95%信頼区間、リスク集合を一組として読み、曲線全体の比較や治療効果へ結論を広げてよい範囲を区別できることを到達点にします。

3年生存率が表す確率

Kaplan–Meier法で求めた3年生存率は、研究で定めた起点から3年を超えてイベントを経験せずにいる確率の推定値で、死亡をイベントとするなら、3年より後まで生存する確率を表します。なお、起点は診断日、登録日、治療開始日など研究ごとに異なるため、「3年」がどこから数えられているかを結果と一緒に確認する必要があります。

時点$t$までのKaplan–Meier推定量は、イベントが起きた各時点の条件付き生存割合を掛け合わせます。

$$\widehat{S}(t)=\prod_{t_j\leq t}\left(1-\frac{d_j}{n_j}\right)\tag{1}$$

式(1)は、時点$t$までの各イベント時点$t_j$について、直前のリスク集合$n_j$人のうちイベントが$d_j$件起きたという情報を順に積み上げ、時点$t$を超える生存確率を推定する式です。

生存時間解析入門で扱ったように、打ち切られた対象者も、打ち切り時点まではリスク集合へ寄与します。そのため、3年生存率を「登録者のうち3年時点で生存が確認できた人数の割合」と言い換えるのは適切ではありません。後者では3年より前に追跡を終えた対象者の扱いが定まらず、Kaplan–Meier推定量とは別の量になるからです。

曲線の段差から読む3年

生存曲線は、イベント時点で下がり、その間は水平に保たれる階段状の曲線です。たとえば、3年がイベントのない水平区間に入るなら、その直前のイベント時点から同じ高さとなります。今回のpbcデータでは3年が1,095.75日に相当し、その直前の死亡は1,083日、次の死亡は1,152日だったため、この区間では同じ推定値です。

ここでよくある誤解は、曲線上の3年に対象者が死亡していなければ、3年生存率は直接観察された割合だという理解です。実際には、それ以前の全イベント時点で作られた条件付き割合の積です。3年の縦線と曲線が交わる高さは読み取り位置を教えますが、推定がどの情報から組み立てられたかまでは表しません。

そして、Kaplan-Meier推定量と曲線の右端では、リスク集合が減った後の段差が不安定になる理由を説明しており、特定時点を選ぶ場合も同じで、カレンダー上できりのよい年数より、その時点まで十分な追跡情報が残るかどうかが先にあります。

点推定と95%信頼区間

survivalパッケージのpbcデータセットに含まれる無作為化対象312例を使い、死亡をイベント、移植と死亡なしの追跡終了を打ち切りとして解析しました。3年生存確率は80.9%で、Greenwood分散と対数対数変換による95%信頼区間は76.0%から84.8%でした。この80.9%は標本から得た一点の推定であり、95%信頼区間は同じ手順を反復したときの区間推定の性質に基づく不確実性を表します。

そのため、80.9%だけを小数点以下まで精密に引用しても、推定の精度は上がりません。私は、特定時点の結果を読むとき、点推定より先に信頼区間の幅とリスク集合を見ます。点推定が研究上の判断基準をまたぐ場合、区間の下限と上限で判断が変わるかを確かめたいからです。

なお、95%信頼区間を「真の3年生存確率が95%の確率で入る範囲」と読むのは頻度論的な定義と合わず、ここでの区間は、同じ標本抽出と計算を繰り返したとき、その手順で作る区間の95%が対象の値を含むように構成されています。

リスク集合が支える精度

3年時点のリスク集合は240例でした。3年までに死亡59例、打ち切り13例であり、死亡が観察された59例と3年時点でリスク集合に残る240例を合わせた299例、全312例の95.8%について、3年の状態を決める情報が得られています。点推定と区間だけでなく、この240例を併記すると、曲線のどの程度成熟した部分から80.9%を読んだのかが分かります。

そして、同じ80.9%でも、3年時点のリスク集合が少なければ意味は変わります。今回のデータで3年直後に死亡がもう1件起きたと仮定した一段分の低下は0.34パーセントポイントですが、これは240例のリスク集合に基づく値です。一般に一段の大きさはその時点のリスク集合に依存するので、この0.34を別の研究へ移してはいけません。

Gebskiら(2018)は、時間イベント解析の成熟度を追跡期間の代表値だけで判断せず、関心時点で利用できる追跡情報を見る必要を論じています。特定時点の生存率を報告するなら、少なくとも点推定、95%信頼区間、その時点のリスク集合を一組にすることを勧めます。

打ち切り仮定が変える解釈

Kaplan–Meier推定では、ある時点までイベントなく観察された対象者がその後に打ち切られることと、その後のイベント発生可能性を、観測された情報の下で独立とみなす必要があります。予後不良の対象者ほど早く追跡不能になる状況では生存確率が過大方向へ、予後良好の対象者ほど早く追跡不能になる状況では過小方向へ偏り得ます。

今回の例では移植を打ち切りとして扱いました。しかし、移植がその後の死亡リスクと関連するなら、独立打ち切り仮定は自動的には満たされず、偏りの向きも一意に決まりません。この留保があるため、80.9%をpbc対象者に共通する無条件の事実として扱うのではなく、死亡をイベント、移植を打ち切りと定義した解析の推定値として読みます。

この区別は、打ち切りと左切断で説明した追跡機構の問題につながります。関心時点より前の打ち切りが多い研究では、信頼区間が狭く見えても、独立打ち切り仮定の妥当性は別に確認しなければなりません。

一点から治療効果を読まない

3年生存率が群ごとに80%と70%なら、3年時点の差は10パーセントポイントです。ただし、この差だけで追跡期間全体の治療効果を結論づけず、特定時点の差が対象としているのは、その一点の生存確率であり、曲線全体の差やハザード比とは推定対象が異なります。

例えば、曲線が3年より前に離れてから近づく場合と、3年直前に初めて離れる場合では、3年時点の差が同じでも経過は異なります。Richら(2010)はKaplan–Meier曲線の段差と打ち切りの読み方を説明し、Pocockら(2002)は曲線の形や追跡範囲を含めた表示上の注意を述べています。研究目的が全追跡期間の群間比較なら、一点を選んだ理由を後付けせず、曲線全体と事前に定めた解析を併せて解釈します。

一方、3年時点の生存が臨床研究で事前に意味づけられた評価時点なら、その一点は明確な推定対象になります。その場合にも、群別の点推定と信頼区間、リスク集合を報告し、観察後に都合のよい時点を選んでいないことが分かる記載が必要です。

pbcデータでの再現

Dicksonら(1989)が報告したpbcデータの無作為化対象312例では、死亡125例、移植19例、死亡なしの追跡終了168例が記録されています。以下は同じ対象とイベント定義でKaplan–Meier推定を行い、3年時点の値を取り出す最小限のコードです。使用パッケージはsurvivalだけです。

library(survival)
data(pbc, package = "survival")
trial <- pbc[!is.na(pbc$trt), c("time", "status")]
death <- trial$status == 2L
fit <- survfit(Surv(time, death) ~ 1, data = trial,
  conf.int = 0.95, conf.type = "log-log")
summary(fit, times = 3 * 365.25, extend = FALSE)
#> time=1096, n.risk=240, n.event=59, survival=0.8086
#> 95% CI: 0.7600 to 0.8483

出力の読み方は、3年時点の生存確率が0.8086、95%信頼区間が0.7600から0.8483、直前のリスク集合が240例です。読み違えやすいのは、n.event=59を3年時点だけの死亡数と受け取る点で、これは解析開始から3年までに観察された死亡の累積数です。

同じ推定結果から、信頼帯、3年を表す縦線、点推定を重ねた図を作りました。作図部分ではbase Rのplot関数を使い、95%信頼区間を薄い帯で表しています。

curve <- summary(fit)
step_time <- c(0, rep(curve$time, each = 2))
step_surv <- c(1, rep(curve$surv, each = 2))
step_lower <- c(1, rep(curve$lower, each = 2))
step_upper <- c(1, rep(curve$upper, each = 2))
step_time <- c(step_time[-length(step_time)], max(trial$time)) / 365.25
plot(NA, xlim = range(step_time), ylim = c(0.4, 1),
  xlab = "Years from baseline", ylab = "Survival probability")
polygon(c(step_time, rev(step_time)), c(step_lower, rev(step_upper)),
  col = adjustcolor("#2C7FB8", alpha.f = 0.18), border = NA)
lines(step_time, step_surv, col = "#155C8A", lwd = 2)
abline(v = 3, col = "#C0392B", lty = 2)
points(3, 0.8085876, pch = 19, col = "#C0392B")
pbcデータのKaplan–Meier曲線。3年時点の生存確率80.9%、95%信頼区間76.0%から84.8%、リスク集合240例が示されている
図1 pbcデータのKaplan–Meier曲線と95%信頼帯です。3年の縦線が曲線と交わる高さは80.9%で、この一点は76.0%から84.8%の区間と240例のリスク集合とともに読みます。

図1では3年が曲線の十分内側にあり、直前の段差から12.75日後に位置します。もっとも、図の帯が狭いことは独立打ち切り仮定を保証しません。図から読める標本変動と、イベント・打ち切りの定義から生じる解釈上の留保を分ける必要があります。

公表時に残す情報

KaplanとMeier(1958)の積極限推定量は、右打ち切りを含む観察から生存関数を推定する方法です。ところが、論文中に「3年生存率80.9%」だけを提示すと、読者は推定時点の情報量と不確実性を評価できないため、曲線、信頼区間、リスク集合の表示に加え、起点、イベント、打ち切りの定義を本文へ記載します。

結果文なら、「登録日を起点とし、死亡をイベント、移植と死亡なしの追跡終了を打ち切りとしたKaplan–Meier推定で、3年生存確率は80.9%(95%信頼区間76.0%–84.8%)、3年時点のリスク集合は240例だった」と書けます。この形なら、読者は何を推定した80.9%なのかを追えます。

判断を一点に固定しない

3年生存率は、事前に定めた3年という時点の状態を伝えるには分かりやすい推定値です。ただし、判断の中心は80.9%という高さだけではありません。起点とイベントの定義、95%信頼区間、240例のリスク集合、打ち切りが独立とみなせる根拠がそろって、初めてその数値を研究目的に結びつけられます。

自分の研究データで評価時点の選び方や打ち切りの扱いが結果をどう変えるか整理したい場合は、Dr.データサイエンスで解析方針を相談できます。曲線から値を読む作業より前に、どの時点のどの確率を研究の推定対象にするかを言葉で固定しておくことが出発点です。

参考文献

  1. Kaplan EL, Meier P. Nonparametric Estimation from Incomplete Observations. Journal of the American Statistical Association. 1958;53(282):457-481.
  2. Rich JT, Neely JG, Paniello RC, Voelker CCJ, Nussenbaum B, Wang EW. A practical guide to understanding Kaplan-Meier curves. Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2010;143(3):331-336.
  3. Pocock SJ, Clayton TC, Altman DG. Survival plots of time-to-event outcomes in clinical trials: good practice and pitfalls. The Lancet. 2002;359(9318):1686-1689.
  4. Gebski V, Garès V, Gibbs E, Byth K. Data maturity and follow-up in time-to-event analyses. International Journal of Epidemiology. 2018;47(3):850-859.
  5. Dickson ER, Grambsch PM, Fleming TR, Fisher LD, Langworthy A. Prognosis in primary biliary cirrhosis: model for decision making. Hepatology. 1989;10(1):1-7.

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