患者背景表では年齢、性別、検査値、併存症などの候補がすぐに増えるため、研究対象と主要解析を理解するのに必要な変数へ範囲を絞ります。とくに、平均±SDと中央値[IQR]の選択、割合の分母、欠測数、群間差の示し方が曖昧なままでは、見栄えは整っても解析対象の実像を読み取れない表になります。
Table 1に置く変数の範囲
Table 1の役割は、解析前の対象集団と比較群の構成を読者に示すことです。Hopewellら(2025)は無作為化試験で群ごとの人口統計学的・臨床的特性を記述するよう求めており、研究対象を理解し、主要解析の適用可能性を検討するのに必要なベースライン変数が中心になります。
この役割から考えると、主要アウトカムの予後に関係する変数、選択基準に係る変数、共変量調整に使う変数は優先度が高くなります。一方、治療開始後に測定された値やアウトカムを同じ表に混在させると、比較の時点が崩れるため、別の結果表に分ける方が明確です。
また、変数の数は「取得できたか」ではなく「対象と解析を理解するのに必要か」で決まります。類似した臨床検査値を網羅的に並べるより、主要解析との関係を説明できる変数に絞り、非掲載変数の基準と具体的な表示順を解析計画の段階でそろえると、研究ごとの恣意的な追加も避けられます。
数値要約は分布と目的で選ぶ
平均±SDは平均とその周りの散らばりを示し、中央値[IQR]は順序の中心と中央50%の範囲を示します。Greenら(2026)が論じるように、平均と標準偏差だけでは歪み、外れ値、多峰性を十分に伝えられない場合があり、それぞれの要約量が表す量は同じではありません。
例えば、survivalパッケージのpbcデータセットでは、ビリルビンの平均はD-penicillamine群2.87mg/dL、Placebo群3.65mg/dLでしたが、中央値はそれぞれ1.40mg/dLと1.30mg/dLでした。平均と中央値の開きは分布の歪みを疑う手がかりになり、平均値だけで両群を記述すると分布の形を見落とします。
そのため、サンプルサイズによって正規性検定の感度が変わり、測定尺度、外れ値、分布形状、伝えたい中心の量も要約方法に関係するので、p値だけで平均±SDと中央値[IQR]を機械的に切り替える方法は適切ではありません。
割合は分母と一緒に読む
「女性86.7%」という表示だけでは、全登録例を分母にしたのか、性別が記録された例だけを分母にしたのかが分かりません。Vandenbrouckeら(2014)が変数ごとの欠測数の報告を求めていることも踏まえ、カテゴリ変数は該当数/評価可能数(%)と示すと誤解を減らせます。
実際、pbcデータセットの無作為化参加者312例では、女性はD-penicillamine群137/158(86.7%)、Placebo群139/154(90.3%)でした。この書き方なら、分子と分母をその場で確認でき、欠測による分母の違いと発生割合の違いを分けて考えられます。
欠測は空欄ではなく数で示す
コレステロールの観測値はD-penicillamine群140例、Placebo群144例であり、欠測はそれぞれ18例と10例でした。この差を伏せたまま完全例の平均や割合だけを並べると、読者は群ごとの情報量の違いを判断できません。
この欠測数について、欠測した値と転帰の関係が不明なため、D-penicillamine群の欠測が多いという事実だけから完全例の要約が高めまたは低めに偏ったとは判断できず、Table 1では変数ごと・群ごとの欠測数と評価可能数を明示したうえで、欠測機序を別途評価する必要があります。
SMDが示す群間差
標準化平均差(standardized mean difference、SMD)は、連続変数の群間差を群内の散らばりで標準化した値です。Austin(2009)は、傾向スコアによるマッチング後の共変量バランス診断で、サンプルサイズの影響を強く受けるp値よりも、SMDなどで分布の差を評価する考え方を示しています。
2群の平均を$\bar{x}_1,\bar{x}_2$、標準偏差を$s_1,s_2$とすると、連続変数のSMDは次式で計算できます。
$$\mathrm{SMD}=\frac{\bar{x}_1-\bar{x}_2}{\sqrt{(s_1^2+s_2^2)/2}}\tag{1}$$
式(1)は、2群の平均差を両群の標準偏差から作った共通の尺度で割ることを表します。符号は引き算の向きで決まるため、表の注記に正の向きを書き、差の大きさを見るときは絶対値も確認します。
この式をpbcデータセットの年齢に当てはめると、D-penicillamine群は51.42±11.01歳、Placebo群は48.58±9.96歳で、平均差は2.84歳、SMDは0.270でした。これはこのデータで観察された差であり、無作為化が失敗したことや、年齢が治療効果の差を生んだことをSMDだけでは示せません。
ただし、観察研究のマッチングや重み付け後にSMDを1つの固定閾値だけで判定すると、分散の違いや分布の裾を見落とすことがあります。SMDは有用な要約値ですが、必要に応じて分布図や分散も併記し、どの共変量にどの程度の差が残ったかを読む方が安全です。
ベースラインp値を載せない理由
無作為化試験では、割付後に観察されたベースライン差は偶然に起こりえます。Senn(1994)はこの差への有意差検定が誤解を招くことを論じており、p>0.05を「バランスが成立した」と読んだり、p<0.05の変数だけを事後的に調整したりする根拠にはなりません。
そこで、サンプルサイズが大きければ小さな差でもp値は小さくなりえる一方、少数例では実務上気になる差があっても検出できないため、無作為化試験の未調整Table 1をベースライン検定の結果表にせず、要約値と解析計画上の調整因子を直接確認します。
pbcデータのTable 1
TherneauとGrambsch(2000)に由来するpbcデータセットのうち、治療群が記録された無作為化参加者312例を使いました。D-penicillamine群158例とPlacebo群154例を並べ、連続変数は分布に応じた要約、カテゴリ変数は分子/分母(%)、欠測は群ごとの件数で示しています。
| 変数 | D-penicillamine(n=158) | Placebo(n=154) | SMD |
|---|---|---|---|
| 年齢(歳)、平均±SD | 51.42±11.01 | 48.58±9.96 | 0.270 |
| アルブミン(g/dL)、平均±SD | 3.52±0.44 | 3.52±0.40 | -0.018 |
| ビリルビン(mg/dL)、中央値[IQR] | 1.40 [0.80, 3.20] | 1.30 [0.73, 3.60] | -0.074※ |
| コレステロール(mg/dL)、中央値[IQR] | 315.5 [247.8, 417.0] | 303.5 [254.3, 377.0] | -0.038 |
| 女性 | 137/158(86.7%) | 139/154(90.3%) | -0.111 |
| 腹水あり | 14/158(8.9%) | 10/154(6.5%) | 0.089 |
| コレステロール欠測 | 18 | 10 | — |
表のSMDはD-penicillamine群からPlacebo群を引いた方向を正とし、※のビリルビンは対数変換後に計算しました。この注記がないと、表の中央値[IQR]とSMDが異なる尺度に基づくことが読者に伝わらないため、変換と符号の定義は表脚注に残す必要があります。
Rで要約と分布を確認する
base Rとsurvivalパッケージを使い、pbcデータセットの対象者数、群別のビリルビン要約、年齢SMDを再現します。数値表と同じデータから群別ヒストグラムも作ることで、中心と散らばりの要約だけでは隠れる右の裾を確認できます。
library(survival)
data(pbc, package = "survival")
table_data <- pbc[!is.na(pbc$trt), ]
table_data$group <- factor(table_data$trt, levels = c(1, 2),
labels = c("D-penicillamine", "Placebo"))
by(table_data$bili, table_data$group, summary)
age_means <- by(table_data$age, table_data$group, mean)
age_sds <- by(table_data$age, table_data$group, sd)
(age_means[1] - age_means[2]) /
sqrt((age_sds[1]^2 + age_sds[2]^2) / 2)
#> D-penicillamine: Min. 0.30, Median 1.40, Mean 2.87, Max. 28.00
#> Placebo: Min. 0.30, Median 1.30, Mean 3.65, Max. 28.00
#> D-penicillamine
#> 0.2702619
出力では両群ともビリルビンの最大値が28.00mg/dLに達し、平均は中央値より高くなっています。読み違えやすいのは、この形を「ビリルビンは常に中央値で報告する」と一般化することであり、ここでの選択は今回の分布と記述目的に対応した判断です。
png("draft/figures/bilirubin-distribution.png",
width = 1100, height = 688, res = 200, type = "cairo")
par(mfrow = c(1, 2), mar = c(4.2, 4.2, 2.5, 1))
for (group_name in levels(table_data$group)) {
values <- table_data$bili[table_data$group == group_name]
hist(values, breaks = seq(0, 30, by = 2), xlim = c(0, 30),
col = "#6BAED6", border = "white", main = group_name,
xlab = "Bilirubin (mg/dL)", ylab = "Participants")
abline(v = median(values), col = "#CB181D", lwd = 2, lty = 2)
}
dev.off()

この図では低値側に観測値が集中し、少数の高い値まで右裾が伸びています。表で中央値[IQR]を採用した根拠を分布図が補いますが、ヒストグラムは群間の医学的な違いや治療効果を評価する図ではないため、ここでは要約方法の確認に使います。
報告ガイドラインとの対応
CONSORT 2025は無作為化試験の群ごとのベースライン特性を求め、STROBEは観察研究で各変数の欠測数を示すよう求めています。研究デザインは異なりますが、どの対象者から要約値が作られたかを追えることが、両者に共通する報告の基盤です。
一方、SMDの主な用途は、観察研究のマッチングや重み付けの前後で共変量の分布がどれほどそろったかを診断することです。無作為化試験のTable 1にSMDを併記する場合でも、無作為化の成否を事後的に検定する値ではなく、観察された差の大きさを記述する値と位置づける必要があります。
解析につながるTable 1の仕上げ方
完成したTable 1から読み取りたいのは、対象集団の範囲、各群の情報量、分布の特徴、そして主要解析との関係です。これらが追えるなら、掲載変数、要約方法、分母、欠測数に理由が生まれ、表は単なる属性の一覧から解析結果を支える記述へ変わります。
そして、無作為化試験ではp値によるベースライン選別を避け、観察研究の調整後ではSMDと分布の両方を読むというように、研究デザインで評価の意味が変わります。要約方法を後から選ぶのではなく、主要解析と報告方針に対応させて事前に定めることが、読み手にとっても再現する側にとっても最も分かりやすい仕上げ方です。
参考文献
- Hopewell S, Chan AW, Collins GS, et al. CONSORT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025;389:e081124.
- Vandenbroucke JP, von Elm E, Altman DG, et al.; STROBE Initiative. Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology (STROBE): explanation and elaboration. International Journal of Surgery. 2014;12(12):1500-1524.
- Austin PC. Balance diagnostics for comparing the distribution of baseline covariates between treatment groups in propensity-score matched samples. Statistics in Medicine. 2009;28(25):3083-3107.
- Senn S. Testing for baseline balance in clinical trials. Statistics in Medicine. 1994;13(17):1715-1726.
- Green DJ, Campbell MJ, Koutoumanou E. When means and standard deviations are an incomplete summary of a continuous variable: problems, solutions, and utilising the reference ranges to check normality. BMJ Medicine. 2026;5(1):e001796.
- Therneau TM, Grambsch PM. Modeling Survival Data: Extending the Cox Model. New York: Springer-Verlag; 2000.


