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【医療統計版】効果量の選択:平均差と標準化平均差の使い分け

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うつ症状に対する介入のシステマティックレビューで、組み入れた試験のうち何本かがHAMD-17、残りがMADRSで症状を測っている、という状況は珍しくありません。測っている構成概念は同じでも、項目数も配点も異なる2つの尺度では1点の重みが揃っておらず、平均差をそのまま統合すると統合値の単位が定まりません。

この単位の問題があるため、効果量として平均差、標準化平均差、平均比のどれを選ぶかは、尺度が揃っているか、原点に意味があるか、報告の読み手が何点の改善を知りたいのかで決まります。ここでは、母集団の効果を共通にそろえてランダムに生成した8試験のデータで、3種類の効果量が同じ介入をどう表すかを追います。

同じ構成概念を別の尺度で測った8試験

母集団の標準化平均差を全試験で-0.40に固定し、HAMD-17で測る5試験(母標準偏差7点、対照群平均22点)とMADRSで測る3試験(母標準偏差11点、対照群平均30点)を乱数で生成しました。合計923例、介入群459例、対照群464例で、試験ごとの症例数は73例から178例まで幅を持たせてあり、実際のレビューで集まる規模のばらつきに近づけています。

この設定では、標準化した効果が共通でも、尺度の単位に戻した真の平均差はHAMD-17で-2.8点、MADRSで-4.4点となり、同じ介入でありながら数値が1.6倍ほど異なります。ここが尺度の混ざった連続アウトカムで最初に効いてくる点で、試験ごとの平均差の大小を、そのまま効果の大小として読めなくなります。

実際、生成された各試験の平均差を見ると、MADRSのT07が-4.80点と最も大きく、同じMADRSのT08は-0.32点にとどまりました。ただし標準化平均差に直すとT07は-0.496、T08は-0.027となってHAMD-17の5試験と同じ物差しの上に並び、このとき順序も動いて、平均差では3番目に大きかったMADRSのT06(-2.24点)は標準化平均差では-0.195で6番目へ下がります。

単位を保ったまま統合する平均差

効果量の選択肢のうち最も素朴なのが、介入群と対照群の平均値の差をそのまま効果量とする平均差で、尺度の点数という単位をそのまま持ち越します。試験$i$について次のように書きます。

$$\mathrm{MD}_i = \bar{y}_{Ti} – \bar{y}_{Ci} \tag{1}$$

式(1)の$\bar{y}_{Ti}$は試験$i$の介入群の平均値、$\bar{y}_{Ci}$は対照群の平均値で、得られる値は元の尺度の点数です。うつ症状尺度では得点が低いほど症状が軽いため、負の値が介入に有利な方向を表します。

HAMD-17の5試験だけをDerSimonian-Lairdの変量効果モデルで統合すると-1.812点、95%信頼区間は-2.942から-0.682となり、データ生成で置いた真の平均差-2.8点を含む区間として、HAMD-17の点数のまま読み取れます。この単位が保たれる性質が、平均差を選ぶ最大の理由にあたります。

Takeshimaら(2014)は、平均差と標準化平均差を検出力、一般化可能性、解釈可能性の面で比較し、尺度が同一であれば平均差の方が解釈しやすいことを示しました。したがって、組み入れた全試験が同じ尺度を使っている場面で、あえて標準化平均差へ変換する理由はほとんどなく、変換すれば各試験の標準偏差の違いを推定値へ持ち込むだけの結果になります。

尺度が混ざった平均差が読めない理由

8試験を尺度の区別なく平均差で統合すると、-2.056点、95%信頼区間-3.062から-1.049という値が出ます。数値そのものは計算できるものの、この2.06点がHAMD-17の2点なのかMADRSの2点なのかが定まらず、臨床的な大きさの判断にも、他のレビューとの比較にも使えません。

この混在について注意が必要なのは、単位のズレが研究間のばらつきの指標に必ず現れるとは限らない点です。今回のデータでは尺度を混ぜた平均差の$I^2$も標準化平均差の$I^2$も0%で、Q統計量は4.80(自由度7、p=0.684)と4.75(自由度7、p=0.691)でした。

もっとも、この8試験では尺度ごとの症例数と標準偏差の組み合わせが打ち消し合う方向に働いただけで、別のデータで同じことが起きる保証はありません。そのため、尺度が混ざっているかどうかは、異質性の検定結果から推測する事柄ではなく、組み入れ表の測定尺度の欄を見て確認する事柄になります。

標準化平均差と小標本の補正係数

尺度を揃える方法として最も広く使われているのが、各試験の平均差を、その試験のプールした標準偏差で割って単位を消す標準化平均差です。割り算の分母が試験ごとに変わる点が、後で効いてきます。

$$d_i = \frac{\bar{y}_{Ti} – \bar{y}_{Ci}}{s_{pi}} \tag{2}$$

式(2)の$s_{pi}$は、試験$i$の両群の標準偏差を自由度で重み付けてプールした値です。点数を標準偏差の個数へ言い換える操作にあたり、HAMD-17の-2.8点もMADRSの-4.4点も、母集団では同じ-0.40という値へ写ります。

ただし、式(2)をそのまま使うと、標準偏差の推定に伴う偏りのために効果量の絶対値が過大になります。Hedges(1981)はこの偏りを打ち消す補正係数を導いており、群内自由度を$m_i$として次の形で与えられます。

$$g_i = \left(1 – \frac{3}{4m_i – 1}\right) d_i \tag{3}$$

式(3)の括弧内が補正係数で、$m_i$が大きいほど1に近づきます。今回の8試験では0.9894から0.9957の範囲に入り、最も症例数の少ないT03でも縮小は1.06%にとどまりました。

この程度の補正量であれば省略したくなりますが、両群あわせて20例程度の試験が混じると、式(3)の補正係数は0.96前後まで下がり、統合値の水準が動く余地が出てきます。実際の解析では、補正の有無を結果の脚注で書き分けるより、症例数にかかわらず補正後の値で統合して、その旨を方法に一行書いておく方が扱いやすいでしょう。

推定値へ入り込む標準偏差の違い

標準化平均差の分母は母集団の標準偏差ではなく、その試験で観察された標準偏差です。除外基準が厳しく症状の重さが揃った集団では標準偏差が小さくなるため、同じ点数の改善であっても標準化平均差の絶対値は大きい方へ動きます。

実際、今回のデータでもHAMD-17の5試験のプールした標準偏差は6.65点から7.38点まで散らばっており、T03の平均差-3.19点は標準偏差6.80点で割ると-0.470、式(3)の補正後は-0.465となりました。一方、T01の平均差-1.31点は標準偏差7.28点で割ると-0.180、補正後は-0.179となり、平均差では2.4倍だったT03との開きが、標準化平均差では2.6倍に広がっています。

標準化平均差の研究間のばらつきは、介入効果の違いと集団の均質さの違いを分離しないまま含んでいます。組み入れ基準が研究間で大きく異なるレビューでは、異質性が大きいという観察からサブグループ解析で効果修飾因子を探しに行く前に、各試験の標準偏差を並べて散らばりの出所を確かめておく必要があります。

平均比を選べる尺度と選べない尺度

もう一つの選び方として、群間の平均値の比を効果量にする方法があります。Friedrichら(2008)がシミュレーションで検討した平均比は、比の対数を取ってから統合し、最後に指数へ戻す形で扱われます。

$$\log \mathrm{RoM}_i = \log \bar{y}_{Ti} – \log \bar{y}_{Ci} \tag{4}$$

式(4)は、介入群の平均値が対照群の何倍かを対数の差として表したものです。HAMD-17の5試験でこの統合を行うと0.9154、95%信頼区間0.8660から0.9677となり、介入群の得点が対照群の91.5%の水準にあると読めます。

この平均比は尺度の単位に依存しないため、尺度が異なる研究をまたいで使えるようにも見えます。もっとも、対数を取る以上は平均値が正でなければならず、原点が任意に決まる尺度や、ゼロを跨いで正負に散らばる変化量には定義できません。

そのため、ベースラインからの変化量を統合する解析に平均比を使うことは推奨できません。この制約から、平均比が向くのは入院日数、ICU滞在期間、クレアチニン値のように原点に物理的な意味がある比例尺度で、うつ症状の合計得点のように原点が採点規則で決まる指標では、標準化平均差の方が安全な選択になります。

元の尺度へ戻した報告の作り方

標準化平均差の-0.26という値だけを示されても、臨床家が治療選択の議論に使える情報にはなりにくい面があります。Muradら(2019)は、尺度が異なる連続アウトカムの扱いを整理したうえで、統合した標準化平均差に代表的な尺度の標準偏差を掛け、元の単位へ戻した値を併記することを勧めています。

この方針に沿って、8試験の標準化平均差-0.260にHAMD-17の5試験のプールした標準偏差6.92点を掛けると-1.80点、95%信頼区間は-2.69から-0.91点となります。同じ5試験を平均差のまま統合した-1.812点とほぼ一致しており、MADRSの3試験分の情報を取り込みながら、HAMD-17の点数として報告できる形になりました。

この併記にあたっては、標準化平均差の値と信頼区間、換算に使った標準偏差の出所、そして元の尺度に戻した点数を並べて書きます。換算に使う標準偏差を明示しないまま点数だけを示すと、読み手の側で計算を追えなくなるため、査読でも指摘の対象になります。

なお、DerSimonianとLaird(1986)が示した変量効果モデルの枠組みは、効果量が平均差でも標準化平均差でも対数平均比でも共通で、研究間分散を推定して重みへ加える手続き自体は変わりません。統合の方法を選び直しているのではなく統合する量の定義を選んでいる、という整理が、効果量の選択では先に来ます。

Rによる統合値の確認

ここまでの数値は、base Rとstatsの関数だけで再現できます。HAMD-17の5試験とMADRSの3試験を生成し、各群の平均値と標準偏差から、平均差、補正前後の標準化平均差、対数平均比と、それぞれの分散を求めます。

set.seed(42)
scale_name <- c(rep("HAMD", 5), rep("MADRS", 3))
sd_pop <- ifelse(scale_name == "HAMD", 7.0, 11.0)
mean_pop <- ifelse(scale_name == "HAMD", 22.0, 30.0)   # 対照群の母平均
n_control <- c(48, 62, 35, 90, 54, 41, 76, 58)
n_treat <- c(45, 60, 38, 88, 51, 44, 72, 61)
mean_treat <- mean_control <- sd_treat <- sd_control <- numeric(8)
for (i in 1:8) {
  y_c <- rnorm(n_control[i], mean_pop[i], sd_pop[i])
  y_t <- rnorm(n_treat[i], mean_pop[i] - 0.40 * sd_pop[i], sd_pop[i])
  mean_control[i] <- mean(y_c); sd_control[i] <- sd(y_c)
  mean_treat[i] <- mean(y_t); sd_treat[i] <- sd(y_t)
}
df_within <- n_treat + n_control - 2
sd_pooled <- sqrt(((n_treat - 1) * sd_treat^2 + (n_control - 1) * sd_control^2) / df_within)
md <- mean_treat - mean_control                        # 式(1)の平均差
md_var <- sd_treat^2 / n_treat + sd_control^2 / n_control
cohen_d <- md / sd_pooled                              # 式(2)の補正前の値
hedges_j <- 1 - 3 / (4 * df_within - 1)                # 式(3)の補正係数
smd_g <- hedges_j * cohen_d
smd_var <- hedges_j^2 * ((n_treat + n_control) / (n_treat * n_control) +
                           cohen_d^2 / (2 * df_within))
log_rom <- log(mean_treat / mean_control)              # 式(4)の対数平均比
log_rom_var <- sd_treat^2 / (n_treat * mean_treat^2) + sd_control^2 / (n_control * mean_control^2)

そこで、研究間分散をモーメント法で推定して重み付けする関数を用意し、尺度を混ぜた平均差、HAMD-17に限った平均差、全試験の標準化平均差、HAMD-17の平均比を別々に統合します。統合した標準化平均差に代表的な標準偏差を掛けて、HAMD-17の点数へ戻した値も並べました。

pool_dl <- function(yi, vi) {
  w <- 1 / vi; fe <- sum(w * yi) / sum(w); q <- sum(w * (yi - fe)^2); dfq <- length(yi) - 1
  tau2 <- max(0, (q - dfq) / (sum(w) - sum(w^2) / sum(w)))
  wr <- 1 / (vi + tau2); est <- sum(wr * yi) / sum(wr); se <- sqrt(1 / sum(wr))
  c(estimate = est, lower = est - 1.96 * se, upper = est + 1.96 * se,
    tau2 = tau2, q = q, i2 = if (q > dfq) (q - dfq) / q * 100 else 0)
}
is_hamd <- scale_name == "HAMD"
sd_ref <- sqrt(sum(df_within[is_hamd] * sd_pooled[is_hamd]^2) / sum(df_within[is_hamd]))
round(rbind(md_mixed = pool_dl(md, md_var)[1:3],
            md_hamd = pool_dl(md[is_hamd], md_var[is_hamd])[1:3],
            smd_all = pool_dl(smd_g, smd_var)[1:3],
            rom_hamd = exp(pool_dl(log_rom[is_hamd], log_rom_var[is_hamd])[1:3]),
            smd_to_md = pool_dl(smd_g, smd_var)[1:3] * sd_ref), 4)
round(c(sd_ref = sd_ref, q_md = pool_dl(md, md_var)[[5]], q_smd = pool_dl(smd_g, smd_var)[[5]],
  i2_md = pool_dl(md, md_var)[[6]], i2_smd = pool_dl(smd_g, smd_var)[[6]]), 3)
#>           estimate   lower   upper
#> md_mixed   -2.0558 -3.0622 -1.0495
#> md_hamd    -1.8123 -2.9425 -0.6822
#> smd_all    -0.2600 -0.3889 -0.1311
#> rom_hamd    0.9154  0.8660  0.9677
#> smd_to_md  -1.7998 -2.6924 -0.9072
#>  sd_ref   q_md  q_smd  i2_md i2_smd
#>  6.923  4.800  4.745  0.000  0.000

この出力を読む順序としては、信頼区間が0を跨いでいるかどうかより先に、推定値の単位を確かめます。尺度を混ぜた-2.056点には解釈できる単位がなく、HAMD-17に限った-1.812点と、標準化平均差から戻した-1.80点だけが、HAMD-17の点数として読める値です。

そこで、同じ8試験を平均差と標準化平均差の2通りで並べた図を作りました。左右で試験の並び順は同じにしてあり、上の関数から得た点推定値と95%信頼区間、最下段に統合値を置いています。

8試験の効果量を左右2枚のフォレストプロットで並べた図。左は尺度を混ぜた平均差で、MADRSのT07が-4.80点と外側に位置する。右は標準化平均差で、同じT07が-0.496となりHAMD-17の試験と近い範囲に収まる。
図1 左は尺度を混ぜたまま平均差で並べた8試験、右は同じ試験を標準化平均差で並べたもの。左でMADRSのT07が-4.80点と外側に位置するのは効果が大きいからではなく、MADRSの標準偏差がHAMD-17の1.6倍ほどあるためで、右では-0.496となりHAMD-17のT03(-0.465)とほぼ同じ位置に並ぶ。

効果量を決める順序

効果量の選択は、統合の直前ではなく組み入れ表を作った時点で決まります。組み入れた全試験が同じ尺度を使っているなら平均差を選び、尺度が分かれているなら標準化平均差で統合したうえで代表的な標準偏差を掛けた点数を併記する、という順序が、報告の読みやすさと再現性の両方を満たします。

一方、平均比を選ぶかどうかは尺度の種類で決まり、入院日数のように原点に意味がある正の値へ限られます。ベースラインからの変化量や、原点が採点規則で決まる症状尺度へ平均比を当てはめる解析は推奨できません。

そのため、効果量を決めるのは検定結果ではなく、測定尺度が揃っているか、原点に意味があるか、読み手が何点の改善を知りたいかという前提条件になります。この順で確認しておけば、統合後に効果量を選び直す必要はなくなります。

そのため、実際の解析では、組み入れ試験の尺度の分布、標準偏差の散らばり、事前に登録した解析計画の記載まで含めて決めることになり、Dr.データサイエンスでは、こうした解析方針のご相談を承っています。

参考文献

  1. Murad MH, Wang Z, Chu H, Lin L. When continuous outcomes are measured using different scales: guide for meta-analysis and interpretation. BMJ. 2019;364:k4817.
  2. Takeshima N, Sozu T, Tajika A, Ogawa Y, Hayasaka Y, Furukawa TA. Which is more generalizable, powerful and interpretable in meta-analyses, mean difference or standardized mean difference? BMC Medical Research Methodology. 2014;14:30.
  3. Hedges LV. Distribution Theory for Glass’s Estimator of Effect Size and Related Estimators. Journal of Educational Statistics. 1981;6(2):107-128.
  4. Friedrich JO, Adhikari NKJ, Beyene J. The ratio of means method as an alternative to mean differences for analyzing continuous outcome variables in meta-analysis: A simulation study. BMC Medical Research Methodology. 2008;8:32.
  5. DerSimonian R, Laird N. Meta-analysis in clinical trials. Controlled Clinical Trials. 1986;7(3):177-188.

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